
工業の街からの進化—坂城町の魅力
長野県坂城町は、千曲川沿いの自然に囲まれた町。上田駅から車で10分ほどの距離にあり、周囲を急峻な山々が取り囲んでいます。
もともと坂城町は機械や金属加工業が盛んな工業の街として知られていましたが、近年ではバラの栽培や伝統工芸である刀鍛冶の町としても注目されています。
この町のもう一つの顔が、ワイン造りに適した土地であるという点です。昼夜の寒暖差が大きく、ブドウの糖度と酸がしっかりと確保されるため、ワイン用ブドウの栽培に適した環境が整っています。
かつては大手ワイナリーもこの地でブドウ栽培に挑戦したほど、そのポテンシャルは高く評価されています。

坂城葡萄酒と成澤さんの挑戦
この坂城町でワイナリーを営むのが「坂城葡萄酒」。代表の成澤さんは地元出身で、ソムリエの資格を持ち、もともと飲食業に携わっていました。
レストランを経営する中で、「飲食業における長時間労働の負担を軽減し、持続可能なビジネスを作りたい」という思いからワイン造りを始めました。
自身の飲食店で提供するワインを自ら手掛けることで、ワインの価値を最大限に活かし、スタッフにも良い環境を提供できるようにしたいという考えが背景にあります。
一見すると寡黙で近寄りがたい印象の成澤さんですが、実は大の猫好き。「LA GATTA(ラ・ガッタ)」というレストランの名前には、イタリア語で「猫」を意味する“gatta”が入っているほどです。その温かい人柄が、ワイン造りにも表れています。
料理とともに楽しむワイン造り
坂城葡萄酒のワインは、「料理とともに楽しむこと」を前提に作られています。例えば、カベルネ・フランはトマトソースを使った料理との相性を考えて選ばれた品種。ワインの方向性は、スタッフとともに試飲を重ねながら決めていくそうです。
畑を訪れると、そこには砂質や礫質の水はけの良い土壌が広がっています。この環境で育つブドウは、凝縮感のある味わいに仕上がり、特にカベルネ・ソーヴィニヨンを使った赤ワインは豊かなボリューム感が特徴です。
ワインは単体で楽しむものではなく、料理と組み合わせることでさらに魅力が引き立つ。そんな信念のもと、坂城葡萄酒ではブドウの栽培からワインの醸造に至るまで、すべてが「料理に合うワイン」という視点で考え抜かれています。

ワインを通じて地域とつながる
成澤さんはワイン造りにとどまらず、地域のレストランやバーの方々とコラボした地域活性化のためのイベント企画にも力を入れています。長野県のワイン文化を発展させ、坂城町を訪れる人々に魅力を伝えることも成澤さんの大切な使命のひとつ。
坂城町には温泉やバラ園、歴史的な建造物など、新しい観光資源もあります。ワインとともに町を楽しむことで、より深くこの土地の魅力を感じられるのでは。
坂城葡萄酒のワインには、成澤さんの想いと、坂城町の風土がぎゅっと詰まっています。一杯のワインから、この町のストーリーを感じてみてはいかがでしょうか。