ワイン樽を学ぼう！種類や素材による味の違いを解説

　ワインの香りを表現する言葉として「樽香がする」という表現を聞いたことがある方も多いと思います。ワインの樽について解説し、製造過程で樽を使った日本ワインを紹介します。

目次

ワイン樽の起源は？木製の樽が登場したのは紀元前3世紀頃

　ワイン樽の起源は、古代ローマ時代に遡ります。当初は粘土製のアンフォラと呼ばれる巨大な壺のようなものでワインを貯蔵していましたが、木製の樽が登場したのは紀元前3世紀頃。最初はワインや穀物などの貯蔵や輸送のために使われていましたが、次第にこの木製の樽が、ワインにとって"ただの容器"以上の効果があることがわかりはじめ、発酵、熟成にも使われるようになります。その後、中世ヨーロッパでワイン生産が盛んになると、樽の使用が広まりました。現代のワイン樽はフランスオークが代表的で、ワインの品質向上に欠かせない存在です。

ワイン樽の作り方は手作業が一般的！産地によって木の種類が異なる

 ワイン樽の作り方は熟練した木工職人による手作業が一般的です。機械生産ではなく職人の手作業なのですね。高価なものである理由が伺えます。フランス、アメリカ、ハンガリーなどが主な産地で、木の種類も異なります。樽作りの過程は、木の選定から寸法切り、曲げ、焼き直し、組み立て、磨き上げに至るまで複雑です。ワイン樽を作る過程で、木を焼く工程があります。樽の中にストーブを入れ、内側から火で炙ります。この焼き時間を変えることで、ワインの出来上がりに違いが出ます。ワインのつくり手は、職人に対し、お肉と同様に、レア、ミディアムといった言葉でこの焼き具合を指定するそうです。木を炙ることで、樽を使ったワインは豊かな風味と複雑な香りが引き出されます。

ワイン樽の種類！一般的なのはフレンチオークとアメリカンオーク

 ワイン樽にはいくつかの主要な種類があります。最も一般的なのはフレンチオークとアメリカンオークです。フレンチオークは上品で芳香な味わいを与え、高品質のワインによく使われます。一方、アメリカンオークはより豊かなバニラやココナッツの風味をもたらし、比較的リーズナブルな価格で利用できます。ワインメーカーはこれらの樽を選ぶことで、ワインに独自の風味や複雑性を与えます。

 長野県塩尻市で、メルローと言うブドウ品種に拘っているドメーヌコーセイというワイナリーでは、同じメルローという品種でつくった赤ワインを、フレンチオーク、アメリカンオークのそれぞれで熟成させ、使用した樽ごとに商品を分けています。

👆ドメーヌコーセイさんの赤ワイン。
左から「４０１」はアメリカンオーク、「６０１」はフレンチオーク、「５０３」はアメリカンオークとフレンチオークのブレンドです。
ドメーヌコーセイさんのワインはこちら→

また、新樽を使うか古樽を使うかでも香りや味わいに変化が出るそうです。私がこれまで訪れた日本ワインのワイナリーでは、あまり新樽は見かけませんでした。日本の気候風土の中で育つ繊細な味わいのブドウの風味を損なわず、その土地ならではのブドウの良さを引き出したいと考えるつくり手が多いからでしょうか。

因みに、海外ワインの中には、オークチップを発酵や熟成段階でワインの中に漬け込んで、チップから香りを移すような作り方をするワインもあるそうですが、日本ワインのつくり手でそのような事をやっているところを私は一度も見たことがありません。皆さん、拘って選んだ樽に入れ、樽の中で呼吸を続けるワインを育てていらっしゃいます。

ワイン樽の種類によるワインの香りと味わいの違い

　一般的に、フレンチオークは上品でスパイシーな香りとバニラのニュアンスをワインに加え、口当たりは滑らかで絹のような口触りになると言われています。一方、アメリカンオークは濃厚なバニラやココナッツの香りをもたらし、ワインに力強く甘い風味をもたらすと言われています。ワインメーカーはこれらの樽を巧みに選び、ワインに深みと独自の個性を与えます。

山梨県甲州市にある老舗ワイナリーまるき葡萄酒では、日本固有品種であるマスカット・ベーリーＡ専用に作られたという樽を使って赤ワインを熟成していました。

👆まるき葡萄酒さんで使われているマスカット・ベーリーＡ専用のワイン樽。「Japon-BAILEY A」の文字が見えます。

ブドウを栽培して、醸造する、瓶詰されるまでに、つくり手は様々な選択をしながら作っていらっしゃいますが、どの樽を、どのタイミングで、どのくらい使うかもその数多ある選択肢のうちの一つです。

　当店では、定期的にワイナリーの方を招いてイベントを開催します。つくり手の方と直接お話が出来る貴重な機会です。興味のある方は、樽の事などもつくり手の方に直接聞いてみるとより楽しいかもしれません。

イベントのお知らせはこちら→