
日本ワインでも増えてきた「オレンジワイン」ってどんなワイン?
「オレンジワイン」と聞くと、オレンジの果実を使っているの?と思われる方もいるかもしれません。オレンジワインは白ブドウから造られた、オレンジがかった色合いが特徴のワインのことで、オレンジの果実は使われていません。
白ワインとも赤ワインとも異なる個性的な香りや味わいやテクスチャーを持ち、「第3のワイン」ということもできる存在は、近年のナチュラルワイン人気の高まりに後押しされ、認知が広がってきています。甲州など、日本ならではのブドウを使ったスタイルも増えてきました。今回はそんなオレンジワインの魅力について、作り方や歴史、味わいの特徴から、日本のワイナリーが手がけるおすすめの銘柄までご紹介していきます。
目次
ワインの色の違いはなぜ生じるの?
ワインは見た目の色で、赤、白、ロゼ、オレンジの4種類に大きく分けられます。ワインの色を決めるのは「ブドウの種類」と「醸造方法」です。
ワインの原料となるブドウには黒ブドウと白ブドウがあります。果皮の色は異なりますが、果肉や果汁はどちらも黄みがかった透明です。つまり、必ずしも原料となるブドウの果皮の色=ワインの色というわけではなく、醸造する際に「果皮をどう扱うか」によって決まります。大まかには、白ワインは果汁だけをアルコール発酵させるのに対し、赤ワインは果汁に果皮や種を漬け込んで発酵(マセラシオン)させるため、ブドウ果皮に含まれる色素やポリフェノール類がワインに溶け込みます。この工程の有無や期間が、ワインの色の違いを生み出すのです。
オレンジワインの作り方
オレンジワインは、白ブドウを使って赤ワインのように果皮や種とともに発酵(マセラシオン)させて作るワインです。マセラシオンは日本語で「醸し」「醸し発酵」ともいわれ、ラベルや説明文に書かれていることもあります。
白ブドウの果皮にはアントシアニンが含まれていないため、赤ワインのような濃い赤色ではなく、オレンジ色や琥珀がかった色合いに仕上がります。色の濃さは、マセラシオンや熟成の期間によって変化します。白ワインのようなフレッシュさと軽やかさがありながら、果皮と接触させポリフェノールやタンニンなどの成分が抽出されることで、赤ワインのような渋みや旨み、複雑な香りが加わる、いいとこ取りの個性派です。
▼「醸し」と書かれた日本ワインのラベル
オレンジワインとロゼワインの違い
オレンジワインとロゼワインは、どちらも淡い色合いを持つ中間色のワインとして見た目が似ているものもありますが、使用するブドウの品種や製法、そして味わいには大きな違いがあります。
オレンジワインは白ブドウを用い、果皮や種とともにしっかり発酵させる赤ワインのような作り方をするのに対し、ロゼワインは主に黒ブドウを使い、果皮の浸漬期間を短くすることで淡いピンク色に仕上げます。味わいの面でも、オレンジワインは渋みやスパイスのような複雑な風味で、より骨格のある飲みごたえが特徴です。一方で、ロゼワインは、赤ワインほどタンニンが抽出されないため、軽やかでフレッシュ、果実味豊かなスタイルが中心です。
(詳しくは:ロゼワインとは?その特徴と製法を解説)
オレンジワインのルーツ
オレンジワインの歴史は古く、その起源はおよそ8000年前のジョージアにあります。ジョージアは世界最古のワイン生産地のひとつで、クヴェヴリといわれる素焼きの壺にブドウの果汁・果皮・種・茎をすべて入れ、地中に埋めて自然発酵させる伝統的な製法が用いられています。そのため、白ブドウで作られたものはオレンジワインの色合いと風味が生まれます。この製法は2013年にユネスコ世界文化遺産にも認定されています。
1990年代以降にイタリアのフリウリ地方のナチュラルワインの作り手がこの製法に注目したことで、ヨーロッパで再評価されるようになりました。現在では日本でも甲州ブドウを使ったオレンジワインが生産されています。
ジョージアでは、その色合いである「琥珀色」を由来として「アンバーワイン」として知られており、オレンジワインという名称は2000年代にイギリスのワイン商によって作られたものだそうです。
ナチュラルワインとオレンジワインの関係
白ワインは酸化を防ぐ役割を持つタンニンをほとんど含まないため、一般的に赤ワインに比べて酸化防止剤(亜硫酸)の添加量が多くなる傾向にあります。しかし、オレンジワインはマセラシオンの工程を経ることでタンニンが自然に加わるため、亜硫酸の使用を抑えることが可能になります。この様な理由から、亜硫酸の添加を最小限にしたいと考えているナチュラルワイン(自然派ワイン)の作り手たちに支持されています。
オレンジワインの味わいの特徴
オレンジワインの香りは、フルーティーな果実味とスパイスやナッツのニュアンスが絶妙に絡み合います。アプリコットやオレンジピール、ドライフルーツのような果実の香りに、ナツメグやシナモンなどのスパイスや紅茶のようなニュアンスが加わることで、奥行きのあるアロマが感じられます。熟成が進むと、ナッツや蜂蜜のようなまろやかな香りへと変化していくのも特徴です。
味わいの一番の特徴は渋み。骨格がしっかりしており、通常の白ワインより飲みごたえがあります。また、酸味やミネラル感もあるため、スパイスを使った料理や発酵食品との相性が良く、余韻の長さもオレンジワインならではのポイントです。
この独特な風味の形成には、マセラシオンによる抽出が大きく関わっています。果皮とともに発酵させることで、タンニンやフェノール類が溶け込み、白ワインとは異なる質感やより複雑で強い風味を持つようになるのです。
オレンジワインの楽しみ方
● 適温は12〜16度。冷やしすぎに注意
オレンジワインの適温は12〜16度。赤ワインよりやや低めくらいが目安です。
特にタンニンがしっかりあるタイプは、温度が低すぎると渋みが強調されてしまうことがあります。果実味がふくらむ少し高めの温度にすることで、酸味やタンニンとのバランスが取りやすくなります。白ワインに近い個性が控えめなタイプは、7〜10度くらいにしっかり冷やすのがおすすめ。香りを感じにくくなってしまうため、冷やしすぎには注意が必要です。
● 赤ワイン用グラスで香りをじっくり楽しんで
オレンジワインは複雑で奥行きのある香りが魅力。その香りをしっかり感じるために、ボルドーグラスのようにボウルの広い赤ワイン用グラスを使って飲むのがおすすめです。空気との接触面が広くなることで、香りがグラスの中にゆっくり広がり、繊細なアロマや果実味の厚みをより感じられます。また、オレンジワイン特有のタンニンやほろ苦さも口全体にやさしく広がり、バランスよく味わうことができます。
オレンジワインに合う料理
オレンジワインの独特の風味としっかりとしたテクスチャーは、油分の多い料理や濃いめの味つけとよく合います。唐揚げやトンカツのような揚げ物との組み合わせは特に相性が良く、ワインに感じられるスパイス感が料理の旨みを引き立てます。食卓全体の味のバランスが整い、いつもの一皿がぐっと格上げされたような印象に。また、スパイシーなアジア料理やエスニック料理と合わせるのもおすすめです。香辛料の効いた料理にオレンジワインの複雑な風味が寄り添い、意外性のあるマリアージュが楽しめます。
日本ワインのおすすめオレンジワイン
ひとくちにオレンジワインといっても、軽やかで繊細なものからしっかりとしたタンニンや複雑味を備えたものまで、その個性は実にさまざま。使用するブドウの品種や、発酵・熟成の期間や方法によって、見た目はもちろん、香りや味わい、質感に豊かな幅が生まれます。ここからは、日本各地のワイナリーが手がける個性豊かなオレンジワインをご紹介します。作り手のこだわり、味わいの特徴、料理とのペアリングにもぜひご注目ください。
● かもし甲州
勝沼産の完熟甲州ブドウを100%使用。レモンやグレープフルーツの柑橘系の香りの中に、ビワや伊予柑など和の香りも感じられます。ほどよい酸とドライな飲み口、甲州らしい心地よい苦味が調和した味わいは、ビール感覚で晩酌にもぴったり。揚げ物や味の濃い料理との相性も抜群です。家紋「マルサン」をあしらった印象的なラベルも目を惹きます。

旨みと苦みが調和した、キレのある辛口オレンジワイン。
晩酌にぴったりな一本
● ヌメロウノ
アンフォラ(陶器の壺)で醸造され、デラウェアから作られた軽やかな飲み口のオレンジワイン。キャンディの甘い香りに、オレンジピールやジャスミンティーを思わせる華やかさが重なります。みずみずしい酸味にハーブのようなほろ苦さが調和し、飲むたびに新しい表情が楽しめる味わいです。農薬や除草剤を使わずに育てたブドウを使い、発酵は天然酵母による自然発酵。酸化防止剤や糖分、酸も一切加えず、自然の力を生かして造られています。塩味の焼き鳥や、鰯のオイルパスタと合わせてどうぞ。

華やぐ香りと軽やかさ、酸味とビター感が織りなす奥行きある
味わい
● FUNPYオレンジ
海風と砂地に育まれた新潟ワインリゾートの一角、カーブドッチが手がける、カジュアルに楽しめる「FUNPY」シリーズのオレンジワイン。デラウェアとナイアガラの食用ブドウならではの芳醇な香りに、ワイン用ブドウをほんの少し加えることで、味わいに奥行きと長い余韻が生まれています。華やかさと旨味のバランスが心地よく、軽やかな飲み口ながら印象はしっかり。魚介料理とよく合います。

華やかな香りとオレンジワイン特有の旨味が調和した、軽やかな
飲み口で初心者にもおすすめの1本
まとめ
オレンジワインは、見た目の美しさや複雑な風味、そして料理との多彩な相性で、ワインの楽しみ方をぐっと広げてくれる存在です。聞き慣れない名前や独特の風味に少し構えてしまうかもしれませんが、実はとても気軽に楽しめる魅力を持ったワインでもあります。まずは気負わずご自宅の食卓で、いつもの料理に合わせてみてください。きっと新しい美味しさや発見が待っているはずです。
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