「甲州」とは?日本ワインでよく聞くその正体を解説!

日本ワインの世界に触れると、よく耳にする「甲州」という言葉。地名?商品名?それとも何かの名前?そんな疑問を持つ方もいるでしょう。「甲州」とは、日本固有のワイン用ブドウ品種の名前で、このブドウを使ったワインを「甲州ワイン」と呼びます。この記事では、日本ワインの顔ともいえる甲州の魅力とその奥深さを解説。個性豊かなおすすめ甲州ワインもご紹介します。

目次

「甲州」とは?日本固有のブドウ品種

「甲州」とは、日本固有のブドウ品種の名前です。日本で古くから栽培されてきた白ワイン用の品種で、800年以上もの長い歴史を持っています。日本で初めて本格的にワインが仕込まれた際にも使われたとされており、日本ワインの歩みを語る上で欠かせない存在です。

甲州ブドウは白ブドウに分類されますが、果皮は淡い紫色でブルーム(果実表面の白い粉)に覆われているため、「灰色ぶどう」と呼ばれることもあります。果肉は黄白色で、繊細な香りと穏やかな甘みに、和柑橘を思わせる爽やかさと適度な酸味が感じられます。このような特徴から、甲州ブドウで造られる「甲州ワイン」は和食との相性が良いワインとして高く評価されています。

また、湿度の高い日本の気候に適していて病気にも強いことから、国内で広く栽培されている品種のひとつです。現在、日本のワイン用白ブドウの約15%を甲州が占めています。主にワイン用として使われますが、生食用としても親しまれています。

甲州ブドウの主な産地

甲州ブドウの主な産地は山梨県です。ブドウの生産量が日本で最も多い山梨県は、甲州の栽培面積でも全国トップを誇り、国内で生産されている甲州のおよそ9割がこの地で育てられています。昼夜の寒暖差が大きいことや水はけの良い土壌など、ブドウ栽培に適した条件が揃っているのがその理由です。山梨のつくり手を訪ねると、長い歴史の中でこの地とともに歩んできた甲州ブドウへの強い思いと、それを育てる契約農家の方々への敬意を感じました。

「甲州」という名前からは山梨県を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、山梨県以外にも長野県や山形県、島根県、宮崎県など全国各地で栽培されています。各地で作られた甲州はそれぞれの地域の風土が反映され、同じ品種から造られていながら異なる個性を持つ甲州ワインが生まれます。

甲州ブドウの栽培方法、棚仕立てとは

甲州ブドウの栽培には「棚仕立て」と呼ばれる特徴的な方法が用いられています。ブドウの木を棚のように水平に広げて育てる栽培方式で、日照と風通しが確保しやすく、湿度の高い日本の気候でも病気を防ぎやすいという利点があります。美しいこの棚仕立ての畑は、甲府盆地の初夏から秋にかけての風物詩にもなっています。

甲州ブドウの歴史

甲州ブドウは古くから山梨県で栽培されていたという記録が残っていますが、その来歴が明らかになったのはごく最近のことです。2013年に行われたDNA解析によると、ヨーロッパ系の品種であるヴィティス・ヴィニフィラを基に、中国の野生種のヴィティス・ダヴィーディのDNAも含んでいることがわかりました。これは、ユーラシア大陸を横断し、シルクロードを経て日本にたどり着いたブドウが、長い年月をかけて日本の風土に根づき、品種として定着したことを示しています。起源は国外にありますが、日本で独自に育まれ800年以上も栽培されてきた歴史から「日本固有品種」として位置づけられています。

甲州以外にも日本固有のブドウ品種はある?

甲州ブドウの他にも日本固有のワイン用ブドウ品種はいくつかあります。代表的なのが、赤ワイン用の「マスカット・ベーリーA」や「ブラッククイーン」です。これらは、日本のワインブドウの父と称される川上善兵衛によって開発された品種で、日本の風土に合うブドウとして広まりました。川上は勝海舟と親交があり、その言葉をきっかけにブドウづくりの道を志したといわれています。

一方で、「シャルドネ」や「カベルネ・ソーヴィニヨン」などは、世界中で広く栽培されている国際品種です。日本固有品種は日本の気候や食文化に寄り添った独自の味わいが魅力です。日本ワイン専門店の当店でも、甲州をはじめとした日本固有品種のワインを取り揃えています!

「甲州ワイン」は甲州ブドウを使った白ワイン

【写真】商品棚に並ぶワインの中で★印が付いているものが甲州ワイン。その中で水色の★印のものが山梨県産のワイン

甲州ワインとは、甲州ブドウを原料に造られる白ワイン。甲州ブドウは白ワイン用品種として日本国内で最も多く栽培されていることから、甲州ワインは日本ワインを語る上で欠かせない存在です。日本ワイン専門店の当店でも多数取り揃えていますが、その大半は山梨県、特に勝沼のワイナリーで造られています。

甲州は主に白ワインに仕立てられますが、近年ではオレンジワインやスパークリングワインといった多彩なスタイルも登場しています。また、醸し発酵や樽熟成といった醸造方法で造られる、赤ワインのような個性を持つ甲州ワインもあります。また、甲州ブドウはワインに使われるだけでなく、醸造後に残る搾りかす(ワイン粕)は、山梨のブランド牛「甲州ワインビーフ」の飼料としても活用されています。

甲州ワインの特徴とは?香り・味わい・産地による違い

甲州ワインの香りは、和柑橘や梨を思わせるやさしい果実香が中心で、清涼感のある爽やかな印象があります。味わいは、酸が穏やかでまろやかな口当たりが特徴。後味にはほんのりとした苦味が感じられ、上品で落ち着いた仕上がりになっています。スタイルは辛口が主流で、アルコール感も穏やか。軽やかでやさしい味わいは和食と相性が良く、日々の食卓にもよくなじみます。

また、甲州ワインは生産地ごとの気候や土壌の違いが味わいにしっかりと表れます。たとえば、長野県や山形県産のものは酸味が美しく際立ち、宮崎県産のものはトロピカルなニュアンスが感じられるなど、地域によって個性が異なります。全国各地の多彩な味わいを楽しめるのも大きな魅力です。

● 長野県のワイン「2019 信州の甲州」

信州・千曲川を見下ろす丘の上にある、はすみふぁーむの自家農園で育てられた信州産甲州ブドウを使用。標高の高い信州の冷涼な気候がもたらす、凛とした酸と厚みのある味わいが特徴の辛口白ワインです。山梨産とは異なる透明感のある味わいは、高原の澄んだ空気を思わせます。すっきりとしたキレ味で、刺身や蕎麦などの繊細な和食との相性が抜群です。

信州の甲州

2019 信州の甲州

(はすみふぁーむ&ワイナリー
/長野県)

2,900円(税込)

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信州産甲州ブドウから造られた、高原の澄んだ空気を思わせる
透明感ある味わい

● 宮崎県のワイン「プライベートリザーブ 甲州」

宮崎県・日向灘の風土を映す、南国育ちの甲州ワイン。温暖な気候と豊富な日照、雨や台風の多い環境で育まれた宮崎の甲州ブドウを100%使用。南国ならではのトロピカルフルーツのような芳醇な香りに甲州らしい和のニュアンスが重なり、リッチでおおらかな味わいに仕上がっています。程よい酸味に続いてすっきりとした甘さが広がり、後味にはグレープフルーツのようなほろ苦さが感じられます。丸みのある辛口で存在感のある一本です。

プライベートリザーブ 甲州

プライベート
リザーブ甲州

(都農ワイン/宮崎県)

3,630円(税込)

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南国特有のフルーツの豊潤な香りに、心地よい酸味と微かな苦み

製法の違いを楽しむ甲州ワインとペアリング

ワインの味わいは、ブドウの品種や栽培環境だけでなく、醸造方法によっても大きく変わります。甲州ワインも例外ではありません。同じ甲州ブドウを使っていても、果汁の抽出方法や果皮との接触時間、熟成の仕方などをどうするかによって、まったく異なる個性が生まれます。当店で取り扱っているさまざまな製法で造られた甲州ワインとおすすめのペアリングをご紹介します。

● シュールリー製法
発酵後に生じる澱を取り除かず、そのままワインと一緒に熟成させる製法。旨味やコクが深まり、出汁の効いた料理や鍋物との相性が抜群です。

<シュールリー製法で仕立てられたおすすめ甲州ワイン>

ロリアン 勝沼甲州

ロリアン 勝沼甲州

(白百合醸造/山梨県)

3,300円(税込)

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漫画「美味しんぼ」にも掲載された、老舗ワイナリーが作るフラッグシップワイン。ふくよかで旨味がたっぷりの当店のスタメン商品

 

● 樽発酵
発酵をステンレスタンクではなく木樽で行うことで、樽由来の香ばしい風味と厚みのある味わいが加わります。鶏肉や豚肉などのシンプルな肉料理とよく合います。

<樽発酵で仕立てられたおすすめ甲州ワイン>

シャンテY.A
甲州 樽発酵

(ダイヤモンド酒造/山梨県)

2,640円(税込)

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フレンチオークの小樽で24カ月熟成。しっかりとした酸・果実味と樽香のバランスがよく、スッキリとした味わいにブランデーを思わせる大人の風格

 

● スキンコンタクト(オレンジワイン)
果皮の成分が溶け出すことで、淡いピンクやオレンジに色づいた見た目に、ほろ苦さと複雑な風味が生まれます。香ばしい揚げ物や山菜など、ほのかな苦味のある料理とよく合います。

<オレンジワインのおすすめ甲州ワイン>

Pony桜花

(駒園ヴィンヤード/山梨県)

2,300円(税込)

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日本の春を感じさせる淡いピンク色。まろやかな果実味にオレンジピールのようなほのかな苦みがアクセントになったキリッとした
辛口ワイン

まとめ

【写真】以前、山梨県を訪れた際に見つけた甲州ワインと料理のペアリングを紹介するポスター。「繊細で爽やかな甲州ワイン。すっきりとした酸味とほのかな苦みが素材を生かした料理によく合います。」と記されています

甲州ワインは、繊細でキレのある味わいが特徴の、日本の食卓によくなじむ白ワインです。山梨県では昔から、一升瓶に入れた甲州ワインをコップに注いで晩酌するのが定番だったそう。そんな昔ながらのスタイルのように、気取らず日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。日本の固有品種で造られた日本ワインならではの味わいを、ぜひ味わってみてください。