
余市で生まれる、ブルゴーニュの息吹
北海道・余市の美園町に広がるMisono Vineyard(ミソノヴィンヤード)。この地でワイン造りに挑むのは、かつて商社マンとして活躍し、その後ワインバーの経営を経て、ワイン造りに情熱を燃やす松村さんです。
2024年12月、雪が降りしきる中での訪問。温かな笑顔で出迎えてくれた松村さんから発せられた言葉には、ワインづくりへの確固たる思いが感じられました。
ワインへの情熱が生んだ転身と決断
松村さんのキャリアは異色。商社マンとして世界を飛び回った後、ブルゴーニュワインへの情熱が高じて東京・青山にワインバーを開業。
しかし、ご自身でワインを味わい、お客様に提供するだけでは満足できず、自らの手でワインを造る決意を固め、千曲川ワインアカデミーで栽培・醸造・経営を学びました。
長野ではなかなかまとまった土地が手に入りにくいという事情もあり、2018年に北海道余市の美園町で農地の紹介を受け、即決。元はさくらんぼ農園だった土地をワイン用ブドウ畑へと生まれ変わらせました。


ブルゴーニュを彷彿とさせる風土
松村さんの畑は東向きの丘陵地に広がり、ブルゴーニュのコート・ドールを彷彿とさせるロケーション。
朝日を浴びながら育つブドウは、余市の冷涼な気候と四方を吹き抜ける風によって健全な成長を遂げます。土壌は火山礫が風化した白灰色の細かい土で、水はけに優れ、ブドウ栽培に理想的な環境を備えています。
ワイナリーの醸造所もまた、かつてのさくらんぼの選果場を改装し、歴史を継承しながら新たなワイン造りに取り組んでいます。農機具を収納する納屋には、前の所有者が施したかわいいイラストが残っています。
こだわりの醸造と未来への展望
植え付けた品種は、ブルゴーニュを思わせるピノ・ノワールとシャルドネ。さらに、元々の果樹園に植わっていたデラウェアやナイアガラの古木からもワインを醸造。醸造は天然酵母。人工酵母の種類が多すぎて、何が一番フィットするのか誰も知りえないという現実を考慮して選択。
その結果、果実味と酸のキレを引き出されるそう。ブルゴーニュの「ドメーヌ・シモン・ビーズ」の当主をはじめ、名だたるワインメーカーとの交流を大切にしながら、コルクもブルゴーニュの友人を介して手に入れており、コルクひとつにもこだわり抜いています。
今後は継続的に、人を雇いながら本格的なワインづくりをビジネスとして成長させる計画。余市の地に根を下ろし、地域の発展にも貢献することを目指しています。
「世の中の流れに迎合することなく、独自でかつ理論的にワインを醸す」――松村さんの強い意志を感じた訪問でした。
農協からの打診を受け、後継者不足に悩む果樹園の畑も引き受けながら、新たなブドウ畑として整備する計画も進行中。Misono Vineyardのこれからに、ますます期待が高まります。
