雪深い江丹別で、夢を育む
旭川空港から車で約一時間。真っ白な雪に包まれた12月の旭川市・江丹別に向かって車を走らせたとき、本当にこんな場所にチーズ工房があるのかと半信半疑。ようやくたどり着いたのは、牧場の一角にある工房。
そこで迎えてくれたのが、チーズ職人・伊勢昇平さんです。ご実家は、伊勢さんのお父様が立ち上げた牧場。現在はお兄様が2代目を継ぎ、伊勢さんはその牛乳を使ったチーズ作りに情熱を注いでいます。
ブルーチーズに賭けた情熱
チーズ作りの道を志し、十勝・新得町の共働学舎で研修を積んだ伊勢さん。その後、江丹別の冷涼な気候がオーベルニュに似ていることに着目し、フランス・オーベルニュ地方に渡り、ブルーチーズの本場で技術を学びました。
「ブルーチーズドリーマー」という肩書のもと、江丹別ならではのブルーチーズを追求。季節による微生物の変動に悩まされ、品質の安定には幾度も苦労。試行錯誤の末、今の完成度へとたどり着きました。
まろやかで、力強いブルー
初めて伊勢さんのブルーチーズに出会ったのは、新千歳空港のお土産コーナー。鮮やかな青いパッケージと「お一人様一つまで」の表示に惹かれて手に取り、自宅で口にした瞬間、ツンとした刺激とは無縁の、まろやかでコク深い味わいに驚きました。
濃厚なミルク感、塩味、カビの風味が絶妙なバランスで調和し、ブルーチーズが苦手な人にも広く愛され得る逸品。国産食材として史上初めて、JAL・ANA両社の国際線ファーストクラスにも採用された実力は伊達ではありません。
江丹別から、未来を耕す
2024年12月に訪問した際に、伊勢さんは江丹別の中心部に、新たなチーズの製造、熟成拠点となる築80年のレンガ倉庫を改装中でした。
さらに、チーズ作りだけにとどまらず、豊かな雪と水資源を生かしたサウナ事業にも挑戦し、地域に新たな息吹を吹き込もうとしています。
江丹別に人を呼び込み、土地の魅力を広げたい、そんな伊勢さんの姿勢は、チーズ職人としてだけでなく、地域を牽引する旗振り役としても輝いています。これからの活躍がとても楽しみです。