岩手・大船渡の潮風に包まれた海街ワイナリー
2023年12月前半の寒い時期、東北新幹線で新花巻駅まで移動して、沿岸の三陸地方にあるまで車で約2時間の移動。岩手県の大きさは四国に匹敵する大きさだそうで、スケールの大きさを感じます。大船渡の港町の中で、海からも100m程度の位置に佇むのがスリーピークス。ワイナリーについて車のドアを開ければ爽やかな潮の香りがします。
人が根付く事業をつくりたい
スリーピークスでお話を伺ったのは及川武宏さん。及川さんは大船渡出身ですが、大学卒業後は、東京で監査法人に勤めて、2011年の東日本大震災以降は、某大手通信会社の立ち上げた財団で復興支援に仕事に携わってきました。
大船渡は大手セメント会社、それに関連する会社が産業中心を担っているのですが、その産業も震災後に、人が離れていく中で、徐々に衰退の一歩を辿っているようです。
そんな中、「観光に頼るのではなく、人が根付く事業を立ち上げたい」という想いをもって、2014年に大船渡に戻されました。以降は、大船で畑を借りてブドウ栽培、陸前高田で借りた畑でリンゴを栽培しながら、ワリナリーに原料となるブドウ、リンゴを持ち込んで委託醸造でワイン、シードルをつくり始めます。その後、2018年にご自身のワイナリーを立ち上げられました。
優しい味わいのシードル
スリーピークスは、父、母、夫(及川さん)、妻、三人の子供で営まれています。そのお母様が栽培を引き受けている畑で作られたリンゴを使って作られたシードル、ジュースには、お母様の名前を取って「りんご屋まち子」と名付けられています。エチケットにも、家族、大船渡の街がモチーフとなった優しいテイストのイラストがあしらわれています。
そのシードルの味わいは、口なじみもよく、どことなく故郷の郷愁を感じる優しい味わいです。2023年に開催された広島サミットでも多くの海外の方々にも提供されて好評を博し、シードルも多くのコンテストで受賞歴があるそうです。またワインも、シードルと同じく、とてもスッキリした味わいで三陸の魚介類によく合いそうです。
地域で事業を起こし産業を担う次世代のリーダー
及川さんは、ワイン、シードル、ジュースづくりでだけではなく、地元のウニやアワビなどの水産養殖業者さんと協力をして、リンゴの搾りカスを餌に混ぜることで、よりフルーティーさも感じる味わいになるように取り組んでいたり、ブドウ棚の上部空間の利用しソーラー架台を設置したソーラーシェアリング事業にも積極的にも参加したり、地元である大船渡の街をどうにかしたいという強いパッションで新しい取り組みも果敢にチャレンジする姿が印象的。
過疎化が進み、廃校となった小中学校を利用した新しい事業への取り組みも構想段階にあるようで、これからも続く大船渡で新しい作業を起こし、それを担うリーダーシップに期待しています。