
山と実験、そしてワイン
塩尻から車を20分ほど走らせた、長野県の松本と塩尻の市境。のどかな景色のなかに伴む、ガレージを改装した小さなワイナリーを訪ねたのは、2023年3月のことでした。迎えてくださったのは、代表の古林さん。
中央アルプスの山々をエチケットに描くほどの登山好きで、ワイナリーの名前もそこから取って「ガクファーム&ワイナリー」と名付けたそうです。山に親しみ、自然を敬う気持ちが込められたその名に、ワインづくりへの真撃な姿勢がにじみ出ていました。
風貌も整えられたあごひげと白髪。とてもダンディーな感じ。


理系出身・翻訳家・ワイン―ガレージからの挑戦
お話を伺うことになった事務所の本棚には、電子工学の専門書がズラリ。実は古林さん、理系大学を卒業後は電気メーカーに勤め、その後は工学系の翻訳者として活躍されていたそうです。
そんな古林さんがワインづくりに目覚めたのは、実験好きな性格がきっかけ。高校時代は生物部に所属していたというルーツも、どこか今に通じています。ワイナリーの様子は、まさに実験室そのもの。
塩尻ワイン大学の1期生としてワインを学んだのち、自宅のガレージをワイナリーへと改装。2020年9月、松本の地に「ガクファーム&ワイナリー」を立ち上げました。
松本と塩尻をつなぐ、アッサンブラージュ
塩尻市岩垂原のメルローと、松本市の自社畑で育てたカベルネ・フランを使用した赤。それぞれの土地の個性を引き出すようにブレンドされた一本は、豊かな果実味と穏やかなタンニンのバランスがとても素晴らしく、当店のお客様の評価も上々。
メルローの名産地・桔梗が原、岩垂原の気候と土壌、そして松本の自社畑のぶどうがつくる味わいは、まさに信州の恵み。

ワインで地域を元気にするために
地元・長野のワインイベントや都内で開催されるイベントにも精力的に参加し、「地元の土地、つくり手を感じてもらうこと」を大切にしている古林さん。
私たちがご縁をいただいたのは、塩尻駅前の交流スペース「スナバ」を通じての出会いでした。「地元の風土や人を感じられるワインをつくりたい。そして、地域の課題にも、ワイナリーとして取り組んでいきたい」と語る古林さんは、ドメーヌコーセイの味村さんなど、塩尻地域の仲間たちとも手を取り合っているそうです。