千曲川を見下ろす扇状地で育むワイン
長野県須坂市に位置する楠わいなりーは、千曲川ワインバレーの中でも特に風光明媚な場所に佇むワイナリーです。
栗で有名な小布施市から車で南に20分ほど走ると、山々の間を流れる千曲川を見下ろす斜面に広がる畑が出迎えてくれます。
その中心にあるワイナリーでは、美しい自然環境を最大限に活かしながら、エレガントなワインが生み出されています。
2回目の訪問となった2024年8月。同行した鎌倉のシェフ、料理人一同も、唸るほどのワインです。
キャンプ場で出会った感動の一杯
楠わいなりーとの出会いは、2022年5月の連休に訪れた長野県・高山村のキャンプ場でした。
その時に出会ったのが、楠わいなりーの白ワイン「日滝原(ひたきはら)」。雪解け水で冷やしたこのワインが、山菜の天ぷらと抜群の相性を見せてくれました。
産直売り場で購入したコシアブラやこごみ、ふきのとうを天ぷらにし、揚げたての苦味を楽しむ食卓に、このワインの爽やかな酸味と豊かな風味がぴったりと寄り添いました。
その美味しさに感動し、翌日にはワイナリーを訪れて直接取扱いをお願いするほど惹きつけられた一杯です。
日滝原の秘密—扇状地が育む理想の環境
「日滝原」とは、セミヨンとソーヴィニヨン・ブランをブレンドした白ワインの名前で、畑がある地区名でもあります。
このエリアは、千曲川流域に広がる扇状地の中腹に位置し、標高の高さ、斜面の傾斜、そして常に流れる風が絶妙な栽培条件を生み出しています。特に、志賀高原から流れ出る清らかな川が湿度を下げ、病害を防ぐ自然の防壁となっています。
収穫直後の11月に訪れた際には、営業の岩崎さんに畑を案内していただきました。畑ごとに異なるブドウの味わいを実際に食べ比べながら、その違いを学べる贅沢な体験でした。
特にピノ・ノワールの畑では、わずかな地形や条件の違いがブドウに与える影響を実感し、ワイン造りの奥深さに感銘を受けました。
挑戦を続ける実力派ワイナリー
楠わいなりーの創業者である楠茂幸さんは、20年以上の会社員生活を経て、40歳を過ぎてからワイン造りに挑戦。
オーストラリアのアデレード大学で本格的に学び、2004年に故郷の須坂市でワイナリーを設立しました。その努力は多くのコンクールでの受賞という形で実を結び、国内外で高く評価されています。
楠わいなりーのワインはどれもエレガントで、日本の食卓に寄り添う味わいが特徴です。中でも「日滝原」は、日本食に合うワインをテーマに作られた特別な一杯。
柑橘系の爽やかな香りと、控えめながらしっかりとした酸味が料理の風味を引き立てます。