
発酵のまち上越から生まれた蒸留所
新潟県上越市にある「越後薬草蒸留所」は、48年(メモ:2025年の8月で丸49年)の歴史を持つ健康食品メーカー・株式会社越後薬草が手がけるクラフトジンの蒸留所です。上越妙高駅から車で15分ほど、住宅地の中に突如として現れる洗練された建物。その扉をくぐると、発酵文化が息づく上越ならではのクラフトジンづくりの世界が広がっています。訪問時、迎えてくれたスタッフの皆さんが一斉に立ち上がり、笑顔で「いらっしゃいませ」と挨拶する姿が印象的でした。その誠実な姿勢から、長年培われた企業の精神が感じられます。
健康食品の副産物から生まれたクラフトジン
越後薬草のジンづくりは、健康食品の製造過程で生まれるアルコールを活用することから始まりました。2020年にクラフトジンの製造をスタートし、今では国内外で高い評価を得ています。健康食品の原料保管庫を案内してもらうと、部屋に入った瞬間、ハーブやスパイスが混ざり合ったオリエンタルな香りに包まれ、思わず「わぁっ」と声を上げてしまいました。80種類の野草を煮出して発酵させ、長期間熟成。発酵の過程では、発酵のブースターとして黒砂糖やオリゴ糖、てんさい糖蜜を加え、かめでじっくりと育てられます。発酵から蒸留まで、職人の手で丁寧に仕上げるこだわりが詰まっています。


唯一無二の味わい、THE HERBALIST YASO GIN
THE HERBALIST YASO GINの最大の特徴は、野草を中心とした80種類の原料を使った植物発酵液の副産物のアルコールをベーススピリッツとして使っていること。通常のクラフトジンとは異なり、野草由来の柔らかく深みのある味わいが楽しめます。発酵によって生まれる複雑な香りと、ジュニパーベリーをはじめとするボタニカルの絶妙なバランス。製造工程では「引き算蒸留」という呼ばれる製法で、雑味を取り除きながらクリアな味わいを追求しています。飲んだ瞬間、ハーブの香りがふわりと広がり、リラックスできる不思議な美味しさが魅力です。
受け継がれる技術と新たな挑戦
この蒸留所を率いるのは、もともと健康食品の製造部長を務めていた梅田さん。クラフトジン事業の立ち上げ時に自ら手を挙げ、製造責任者として携わることになりました。さらに、若い女性社員の感性を取り入れながら、新たな試みに挑戦し続けています。アートを愛する2代目社長のもと、蒸留所の建物も美しく、3階のラボスペースはまるで美術館のような雰囲気。こうしたこだわりが、越後薬草のクラフトジンを特別な存在にしています。「YASO」という名前は、“80(やそ)”と“野草”の響きから名付けられ、日本の発酵文化を世界へ発信する象徴となっています。これからも、伝統と革新を融合させながら、新たな味わいを追求し続けることでしょう。
