山梨県
イケダワイナリー
山梨県甲州市勝沼町。地元農家や古くから山梨で栽培される甲州というブドウ品種を大切に、ストイックなものづくりを続ける家族経営の小さなワイナリーです。ファンが非常に多くその品質の高さを物語っています。
厳しくも愛ある、勝沼の父
山梨県甲州市勝沼町。勝沼インターを降りてすぐ、甲州街道と並行して走る、車2台がギリギリすれ違えるくらいの幅の細い通り沿いにワイナリーが点在しており、その中にイケダワイナリーがあります。小ぢんまりとした家族経営のワイナリーで、ブドウの絵が描かれた外観の建物に入ると、看板犬のラブラドールが出迎えてくれます。
筋の通った池田さんとワイン
一見小さなワイナリーに見えますが、その存在は偉大。この小さなワイナリーがこれまで世に生み出してきたワインは、プロもアマも含めて非常に多くのワイン通の舌をうならせてきました。
1995年、それまで県内の他ワイナリーで醸造をされていた池田俊和さんが、イケダワイナリーを設立しました。それから28年(2023年現在)、池田さんがずっと一人でワインづくりをされてきています。私がお伺いしたのは2022年7月。売店の2階にある部屋に通していただき、奥様に用意いただいた緑茶を前に待っていると、池田さんがいらっしゃいました。その瞬間、場の空気が引き締まった気がしました。会って早々に「ワインなんてそんなに簡単に売れるもんじゃない。」と激励の言葉からスタート。お話を伺う中で、池田さんが真摯に、自分に厳しくワインづくりに取り組んでこられたことが良く分かりました。イケダワイナリーさんのワインは、一切雑味が無く、上品で、1本筋の通った美味しさです。池田さんのその鋭い眼差しと迷いのない話しぶりが、ワインにもそのまま現れていると感じます。
勝沼の地を大事に
イケダワイナリーさんのワインは、勝沼の地で古くから栽培されてきた日本固有品種のブドウにこだわった商品ラインナップ。年間約5万本をこの小さなワイナリーから世に送り出しています。創業以来、イケダワイナリーの白ワインは、勝沼の地元農家さんが栽培する甲州のみで作っていらっしゃるあたり、池田さんの勝沼への愛着や愛情を感じます。池田さんにとってブドウ畑は、ただワインの原料となるブドウが出来るだけの場所ではありません。ワインづくりに古い歴史のある勝沼で、各時代の人々が介在して大事につないできたブドウ畑。「ワインは自分と同じDNAを持った自分の子供。そういう愛情が無いと良いワインは出来ない」と、静かに仰った言葉が印象的です。ワインづくりへの厳しさだけではなく、ブドウやワインへの深い愛情を持った方です。
樽がきれいにズラッと並ぶ貯蔵庫や、醸造所も覗かせて頂きましたが、しっかりと一定の温度湿度に管理され、塵ひとつ無いという雰囲気の整然とした美しさを感じました。私もその日、家に買って帰ったセレクト(赤)を飲みました。樽の香りもちゃんとするのに、嫌な派手さはなく、口の中にビロードが広がるエレガントな美味しさでした。
フランス人も唸る美味しさ
ある夏の夕方、日本に住むフランス人の友人宅でのホームパーティに呼ばれたときのこと。居合わせたフランス人の方々の中に、フランスに日本酒を輸出するお仕事をされているオジ様がいらっしゃいました。私が日本ワインの店をやっている話をすると、その方が「日本ワインはイケダを知っているよ。あそこは味もコスパも最高だね!」と言っていて、何故か私も誇らしい気持ちになりました。イケダワイナリーの池田さんは、細かい事にも妥協せず、ストイックに良いものを作り出す「日本のワインづくり」を代表する方だなぁと帰り道にしみじみ思ったのです。