
雪深いニセコの地で極上のチーズ
2024年12月中旬、北海道を横断するロングドライブの末にたどり着いたのは、しんしんと雪が降り積もるニセコの地に佇む「ニセコチーズ工房」。
迎えてくれたのは、代表の近藤裕志さん。白銀の世界に包まれた工房には、静けさの中にもチーズ作りへの情熱が感じられる空気が漂っていました。

父から子へ受け継がれる挑戦の系譜
「ニセコチーズ工房」の始まりは2006年。流通業界の大手企業に勤めていた近藤さんの父・孝志さんが、祖父の営んでいた酪農にルーツを感じ、フランス留学を経て立ち上げました。
「チーズが来る」と直感した孝志さんの予想は的中し、工房のチーズは瞬く間に人気を博します。やがて、息子である裕志さんにも声がかかりました。
当初、電子機械系を学んでいた裕志さんは、家業に入ることに抵抗があったそう。しかし、就職氷河期世代として将来の展望が描きにくい中、父の熱意に動かされ2010年に参画。
理系ならではの視点で「チーズは科学」という信念のもと、研究を重ねながらチーズ作りにのめり込んでいきました。

新たな手法を模索、進化を続ける工房
父と意見が衝突することもありましたが、裕志さんは国内外のチーズ製造研修に積極的に参加。学んだ技術を持ち帰り、試作を繰り返しながら製品のレシピを改良していきました。
その成果はすぐに現れ、2012年に挑戦した国産チーズのコンテストで、ブルーチーズ「空【ku:】」が受賞。さらに「DEAN & DELUCA」でも取り扱われるようになりました。
「賞をとっても、さらに良いものを作るために変えますよ。」その言葉通り、工房には常に熟成の実験中のチーズが並び、若手スタッフにも積極的に挑戦する環境を提供。
自由な発想で新たなチーズ作りに挑む姿勢が、ニセコチーズ工房の進化を支えています。
お酒と楽しむ、こだわりの味わい
ニセコチーズ工房のチーズは、乳質に頼らず技術で勝負するのが特徴。その努力の結晶ともいえるのが、「二世古雪花【sekka】」。
ドライフルーツのパパイヤ&パイナップルをまぶしたデザートチーズで、ワインはもちろん、吟醸酒や紅茶と合わせても至福のマリアージュ。
また、JAPAN CHEESE AWARDで3大会連続最優秀部門賞を受賞した「空【ku:】」は、穏やかな青カビと爽やかな苦味が絶妙なバランス。お酒とのペアリングで、さらにその魅力が引き立ちます。
「チーズ業界に貢献し、次の世代に残したい。」そう語る裕志さん。ニセコの風土を映した彼のチーズは、これからも進化し続けることでしょう。