
九州の山あいで育まれる、手仕事のチーズ
宮崎県小林市、霧島連山のふもとにある「ダイワファーム」は、豊かな水と緑に囲まれた自然豊かな場所にあります。2025年1月中旬、私たちは宮崎空港から車で約1時間かけてこの地を訪れました。
牧場や牛舎、工房、売店が一体となったその佇まいは、手間ひまと真摯なものづくりの空気に満ちていて、どこか懐かしく温かな印象を受けました。

一歩ずつ積み上げてきた、熟練の味
お話を伺ったのは、ダイワファーム代表の大窪和利さん。大窪さんは、父から酪農を受け継ぎ、1996年にはアイスクリームの製造を、そして2006年にはチーズ製造を開始されました。
チーズ作りで、指導を仰いだのは、九州チーズ界の先駆けともいえる由布院チーズ工房・浦田健治郎(うらけん)さん。北海道の専門学校やアメリカ留学を経て、大分・由布院で酪農とチーズ作りに取り組み、9年目にしてウォッシュタイプのチーズで農林水産大臣賞を受賞。全国のチーズ職人と交流しながら、学びに来る人には惜しみなく技術を伝える名匠。
大窪さんも、家庭用の小さな設備での試行錯誤からスタート。やがて本格的な工房を構え、日本全国やイタリアでの研修を重ねながら、その技術を磨いてこられました。

地元の恵みを生かした、奥行きのある味わい
ダイワファームでは、ブラウンスイス種とホルスタイン種を中心に牛を飼育しており、牛たちが飲むのは天然鉱山でろ過された清らかな地下水。
そのミルクから生まれるチーズは、モッツァレラがコンテストで入賞するなど、確かな実力を誇ります。モッツァレラは、本場・イタリアの系統を汲んだオーソドックスなタイプで、まさに「王道の味」。弾力とジューシーさがしっかりあり、ミルクの甘みも残っていて、食べるたびにおいしさを実感できます。
熟成庫には塩水で洗いながら育てられるウォッシュチーズが並び、しっかりとした塩味が効いた味わいはワインやビール、日本酒との相性も抜群。大窪さんは「北海道と九州では気候風土が違う。だから、チーズもまったく別のものになる」と話してくれました。
次世代へつなぐ、地域と食の循環
ダイワファームでは、チーズの製造過程で出るホエイ(乳清)を地元の養豚農家へ提供し、健康な豚の飼育にも役立てられています。そして今、大窪さんとともに次の世代を担っているのが息子さん。
親子二代でつくるチーズには、60年以上続く酪農の歴史と、小林の自然への敬意、そして家族の想いが込められています。九州の地で丁寧に育まれたその味を、ぜひじっくりと味わってみてください。