宮崎県
都農ワイン
エメラルドグリーンの大海原(日向灘)と、どこまでも広がる真っ青な空を望むことができる場所にある都農ワイン。温暖な気候と多雨という、果樹栽培には不向きとされてきた場所で、定説や常識を気にせずに、"都農ならでは"の美味しいワインを創ることを楽しんで挑戦し続けるワイナリー。どれも南国を感じられる素晴らしく美味しいワインです。
定説を覆した伝説の土地、宮崎県都農町。定説って、何やろかい?
都農ワインは標高150m、宮崎空港から車で北へ走り、太平洋沿岸から少し登った小高い丘の上にあります。ワイナリーのガーデンからは、エメラルドグリーンの大海原(日向灘)と、どこまでも広がる真っ青な空を望むことができ、ガーデンの丘を駆け下りれば空を飛べそうな気持ちになります。
私が訪問した10月中旬、宮崎はまだTシャツ短パンで問題無いほどの陽気でした。
定説を覆し、南国でブドウ栽培に成功
日本のワイン産地と言えば、一般的には山梨県、北海道、長野県と冷涼な地域が適しているイメージが強いので、都農ワインと出会い「宮崎でワイン?!」と思う方もいらっしゃるでしょう。
そんな定説を覆し、信念を貫いて奇跡を起こしてきた場所が、宮崎県児湯郡都農町です。1953年、当時19歳の永友百二さんが開園した果樹園が都農ワイナリーの起源です。師範学校に行かず、農民として生きることを目指した百二さん。「雨の多い都農で果樹栽培なんて不可能」。それが定説でしたが、雨風や台風に対応するため、防風林の植樹、雨よけのビニールトンネルの設置、仕立て方の工夫と試行錯誤し、ブドウ栽培を軌道に乗せます。ブドウが高値で売れるようになると周りにブドウ農家も増えていき、都農町はキャンベルアーリーという品種をはじめとしたブドウ産地として確立されていきます。定説を覆したこの百二さんのチャレンジ精神を引き継ぎ、ブドウづくりからワインづくりへ、町をあげて新たなチャレンジに挑んだのが、第三セクターとしてスタートした都農ワイナリーです。
冒険家と職人の二人三脚で
都農ワイン社長の小畑さんと、工場長の赤尾さん。このお二人が、百二さんと同じく定説を覆すチャレンジ精神で、都農ワインを設立当初から引っ張っていらっしゃいます。
小畑さんはワイナリー設立当時38歳。清涼飲料水メーカーに勤務していましたが、都農町が第三セクターの公募を出しているのを知り、面白そうだと飛び込みました。
小畑さんは大学時代から登山が好きで、青年海外協力隊としてボリビアに、会社員時代の駐在でブラジルに滞在し、大自然の厳しさを肌で経験してきています。最近は自転車にもハマっているとのこと。とても好奇心旺盛でエネルギッシュで、まさに冒険家という感じです。温暖な土地はワイン用ブドウに適さないという定説を覆し、ワインづくりに挑む大変さは、厳しい自然を知り、ちょっとやそっとではへこたれない小畑さんだから乗り越えられたのかもしれません。
メカ好きでもある小畑社長。日本のワイナリーはどこも導入していない最新設備をいち早く導入し、IT会社と一緒になって使えるように作り上げるのも都農ワインのやり方です。目をキラキラさせながら工場内の設備を案内してくださいました。
そんな小畑さんとバディのようにして、設立時からワインづくりに携わっているのが工場長の赤尾さん。赤尾さんは設立時19歳。宮崎県出身で地元の高校を卒業後、第三セクターのワイン技師の公募に応募しました。「寿司職人とか、手に職をつけたかった」と語る赤尾さん。自分で釣った魚をさばいて寿司を握ったり、ベーコンを自分で作ったりするという職人気質っぷり。毎月ブドウ畑の土壌分析をし、雨で土の養分が流れてしまわないよう、畑の草刈りのタイミングを計り、堆肥を用いて土質を良くするなど、日々トライと研究を重ね、現在14品種ものブドウを育てています。2006年にはオーストラリアのワイナリーに派遣される醸造家の日本代表として選出されました。「30年やってるけど、毎年”あぁしたい、こうしたい”と欲求は尽きないですね。」と楽しそうに話してくださいました。
設立からしばらくは小畑さんと赤尾さん2人でほとんどの仕事をこなしていたため、醸造設備も2人で回せるよう様々に工夫したそうです。工場内で、リモコンを付けたポンプや、一人で重たい樽をひっくり返せるよう自作した装置を見せて頂きました。好奇心旺盛な小畑社長と、職人肌の赤尾さんの成せる業です。
ここ都農でしかつくれない唯一無二のワイン
雨が多く台風が来る場所でのブドウづくりを諦めなかった先人たちと、その想いを継いだ都農ワインは、都農という土地の特徴を活かしたブドウづくり、ワインづくりを確立してきました。
冬が短く春の芽吹きが早いので台風の前に収穫を終えられます。また、日照時間が長くブドウの風味を高めてくれます。畑の土壌は地層になっていて、大昔に火山が噴出し固まった岩が基盤なった硬い土壌の上に、黒く柔らかい土壌があり、程よい水分と充分なミネラルでブドウを育てます。
お二人と話していると、温暖な宮崎の土地がむしろブドウ栽培に適しているように思えてきます。そして何より、都農という町と自分たちのブドウ畑に対する愛情をたっぷりと感じます。都農ワインは、定説を覆すというよりは、定説や常識なんて元から気にせずに、都農ならではの「みんなのワイン」をつくるため迷いなく突き進んできたワイナリーなのです。
都農ワインのワインは、どこか南国を感じさせる香りが特徴的です。宮崎の暖かな気候や、朗らかな宮崎県民の人柄がワインに現れている気がします。特に、キャンベルアーリーというブドウ品種のワインは、小畑社長いわく「都農のソウルワイン」。明るく輝くバラ色のワインがグラスに注がれた時の「わぁ!きれい!」という印象そのままの味わいです。いつか是非あなたも、都農町に訪れ、海と空と陽気に包まれて、都農のソウルワインと名物のチキン南蛮を堪能してみてください。