畑と自然が調和する場所
山梨県北杜市小淵沢町。中央自動車道の小淵沢インターを下りてすぐの位置にある「city farm」の新しい畑は、標高950mの高さに広がり、周囲の壮大な自然景色に包まれています。南アルプスや八ヶ岳、さらには富士山まで見渡せる場所にあり、畑からの景色はまさに圧巻。
訪れたときには、畑を背に広がる自然が、まるで畑と一体になっているかのように感じられました。
「city farm」は、これまで大手ワイナリーのブドウ栽培を手がけてきた熟練のプロフェッショナル集団です。取締役の山崎さんは、30年以上の経験を持つベテランファーマー。
ブドウ栽培からワイン造りまでを一貫して手がける姿勢には、他にはない情熱とこだわりが詰まっています。
「畑づくりの匠」としてのこだわり
山崎さんが手がける畑作りは、通常の栽培とはひと味違います。例えば、白州の畑は、急な傾斜を活かした排水の工夫がなされています。台風後でもトラクターが走れるほどの水はけの良さを保つために、排水路をしっかり設けています。
土壌づくりにも並々ならぬ努力を注ぎ、石灰質土壌に有機肥料を加えるなど、試行錯誤を繰り返しながら最適な環境を整えてきました。
実際、小淵沢の畑では、ブドウの木が植えられる前に、ひたすらゴロゴロした石を拾う作業が続けられています。若手社員が根を上げそうになる場面でも、山崎さんは「その1個の石が、50年後にブドウの根を遮ったり、機械を壊したりするかもしれないと思うと、手が伸びるでしょ?」と声をかけ、未来を見据えた細やかな作業の大切さを伝えています。
すべては「この畑が100年続くために」—山崎さんは、そのために必要な手間を惜しみません。
また、畑の設計や運営においても革新を追求。無人剪定機の導入を視野に入れ、効率化も進めながら品質を保つための工夫を続けています。
濃厚な味わいと「ハンギングタイム」
「city farm」のワインづくりには、他では味わえない魅力があります。特にこだわっているのが、ブドウの「ハンギングタイム」を最大限に伸ばすこと。実が樹にぶら下がっている時間を長くすることで、果実が凝縮し、濃厚でしっかりした味わいのワインが生まれます。
特に印象的なのは、山崎さんが10年以上前に出会った、長野のカベルネソーヴィニヨン。小粒で凝縮感があり、まるでレーズンのような果実から作られるワインの深みを忘れることができないそう。
これらの経験を元に、小淵沢の畑でも、最適な収穫時期を見極め、自然の力を最大限に引き出すワイン造りに挑んでいます。飲んだ瞬間、「これは日本のワインなのか?」と驚くような、豊かな味わいを生み出しています。
未来へと続く畑づくり
山崎さんが描く未来のビジョンは、「100年後もこの畑が続いていること」。自然と調和した環境を作り上げ、ブドウ栽培に適した生態系を作り上げることで、持続可能なワインづくりを目指しています。
例えば、トスカーナで見たイノシシのエピソードから学び、畑と自然の共生を重視しています。イノシシがドングリを食べることでお腹が満たされて、ブドウには手を出さない—このように、自然界のバランスを活かした畑作りが、ワインの品質に繋がると考えています。
未来を見据えたその姿勢こそが、100年続く畑づくりを支えることになりでしょう。目先の利益ではなく、長期的な視野で取り組んでいる「city farm」のワイン作り。これからも続ける進化が楽しみです。