奥野田葡萄酒醸造が描く進化の軌跡
山梨県甲州市旧奥野田地区に位置する「奥野田葡萄酒醸造」。ブドウや桃の畑に囲まれた場所に立つピンクの壁の建物は、蝶のモチーフが描かれたショップ&サロン。
高い天井と畑を見渡せる大きな窓、洗練された空間は訪れる人々を魅了します。一瞬「ここはパリ?」と見間違うほどの美しさ。
この蝶は戦国時代から「不滅」の象徴として武将たちに愛された文様。そのシンボルには、代表の中村さんが挑戦を重ねてきた軌跡が詰まっています。
クレイジーと呼ばれた革新者
中村さんが26歳で共同醸造所を引き継いだのは33年前のこと。当時は壁もない屋根だけの醸造所からのスタートでした。
「お客さんにトイレも貸せず、自分もコンビニやホームセンターのトイレを使っていた」と笑いながら振り返る中村さん。
その頃、東京で「甲州土産のワインはマズイ!」と面と向かって言われた経験が、世界に通用するワイン作りへの情熱を駆り立てました。
地元農家の「クレイジーな奴だ」という声にも負けず、欧州系品種の栽培を開始。
1haあたりのブドウの作付けを増やし、根が地中深くまで伸びる独自の栽培方法を確立しました。
地下深くからミネラルを多く含む水を吸い上げ、濃縮感とミネラル豊富なブドウを育てるこの方法は、当時としては革新的な取り組みでした。
止まらない進化の旅路
「設立当初は顧客名簿をWindows3.1で作り、クロネコヤマトも土日は配達していなかった」という時代を経て、奥野田葡萄酒醸造は今や年間約4万本のワインを生産するまでに成長。
2022年には国内初となる吸引型搾汁機を導入。従来の圧力による搾汁ではなく、果汁を吸引することで酸化を最小限に抑え、より香り豊かでフレッシュなワイン作りを実現しました。
中村さんは「手を抜くとバレる」と話しながらも、ワイン作りへの情熱を楽しそうに語ります。顔の見えるお客さんに直接届けるワインだからこそ、品質へのこだわりは一切妥協しません。
香り豊かで美しいワイン
奥野田葡萄酒醸造のワインは、香り高く美しいバランスが特徴です。
戦国時代の武将のようなリーダーシップを発揮する中村さんと、奥さんが描くかわいらしいラベルデザインが融合し、ここにしかない特別な一杯を生み出しています。
夫婦二人三脚で進化を続ける奥野田葡萄酒醸造。自然と共生しながら挑戦を続けるその姿勢が、ワインの味わいにも反映されています。
訪れるたびに心癒される空間で、中村さんの情熱が詰まった一杯をぜひお楽しみください。