
古き温泉宿に息づく、 革新のボタニカル
初めて草譯さんの工房を訪れた時のこと。美ヶ原温泉の静かな通りに佇む、歴史を感じさせる温泉宿。たどり着いたときには、そこが革新的なボタニカルドリンク「草譯」が生まれる場所だとは、想像もしていませんでした。
千と千尋の神隠しに出てくるような、重厚で趣のある建物。中に入ると、古い旅館の面影を残しつつも、洗練されたスタイリッシュな空間が広がります。3階の畳敷きの部屋からは、北アルプスと松本城下町を一望できる絶景が広がっていました。
古い温泉宿とスタイリッシュな工房、そして絶景。この意外な組み合わせが、草譯の革新性を象徴しているように感じました。


ジン専門バーの経験で、唯一無二の味
草譯は、生姜やレモン、カルダモンなどの「草・根・木・皮」を煮出したシロップです。初めて口にした時の衝撃は忘れられません。
鼻を突き抜けるような香りと、甘すぎずキレのある味わいは、まさに新感覚。都内の展示会でサンプルを飲んだ瞬間、「ソフトドリンクでも、クラフトコーラでも、ジュースでもない。何だこの美味しさは!」と驚きました。
つくり手の野村さんは、元々松本でジン専門バーを経営されていました。お酒を飲めないお客様が、まるで申し訳なさそうにソフトドリンクを注文する姿を見て、「お酒を飲まなくても楽しめる飲み物を作りたい」と思うようになったそうです。
コロナ禍でバーの営業が困難になったことをきっかけに、ノンアルコールドリンクの開発に着手。ジンを通して培ったボタニカルの知識と経験を活かし、ベルギーのジン「BUSS N°509」など自分が好きなジンを研究。香りの成分を分解し、再構築することで、草譯は誕生しました。
「人の波に乗りたくない」 孤高の職人
「人の波に乗りたくない」と語る野村さん。バーテンダーの世界で「一番」を目指すのではなく、誰もやっていないことをやりたい。そんな想いから、草譯は生まれました。
既存のジャンルに捉われず、新しい飲み物を創造する。まさに、草の譯を汲み取り、整えるという名の通り、自然の恵みを最大限に活かした、唯一無二のボタニカルドリンクです。
野村さんの言葉には、媚びない強さと、静かな情熱が感じられます。人に流されず、自分の信じる道を突き進む。そんな生き様が、草譯の味わいの中に表現されているように感じます。
