
雪景色に包まれた、森と調和するワイナリー
島根県雲南市にある奥出雲葡萄園。出雲大社から車で約1時間、田園風景を抜け、農道を上ると「食の杜」という看板が見えてきます。その奥に佇むのが奥出雲葡萄園です。
訪れたのは2月、ワイナリー全体が白銀に染まり、幻想的な雰囲気を醸し出していました。ロッジ調の建物やブドウ畑、その先に広がる茅葺屋根の景色がまるで海外のワイン産地に来たかのような錯覚を覚えます。
ワイナリーにはショップだけでなくカフェも併設されており、ブドウ畑を眺めながら食事を楽しむことができます。特に印象的だったのは、ショップに入る際に靴を脱ぐこと。暖炉の温もりに包まれ、人の家に招かれたような温かさを感じました。
挑戦と情熱が詰まったワイン造り
奥出雲葡萄園の母体は、創業60年以上の歴史を持つ木次乳業。創業当初から「食の安全」を理念に掲げ、無農薬農業にも取り組んできました。そんな木次乳業の創業者、佐藤忠吉さんが昭和50年代にワイン事業を構想し、1992年からブドウ栽培を開始。
ワイナリー設立当初から使用している牛乳タンクが今でも醸造用タンクとして現役で活躍しているのには驚かされます。
現在の代表である阿部さんは、農学部出身ということもあり、木次乳業入社後すぐにワイン造りを任されました。まだワインが身近でなかった時代に、山梨の丸藤葡萄酒で研修を受けながら試行錯誤の日々を過ごしたといいます。
無農薬栽培や酸化防止剤無添加にも挑戦しましたが、当時は手探り状態で失敗続き。それでも諦めず、気候条件に合った栽培方法やブドウの仕立て方を研究し続けてきました。

土地と共に育まれる、唯一無二の味わい
奥出雲は雨が多く、ブドウ栽培には決して恵まれた環境とは言えません。そんな中でも、レインカットの工夫や樹間の調整など、試行錯誤を重ねながらブドウを育てています。
阿部さんは「この品種はもう少し間隔を狭くしても良いかもしれない」と、今もなお新たな挑戦を続けています。
奥出雲葡萄園のワインは、欧州系品種と山ブドウ系品種の両方を手がけています。減農薬・除草剤不使用で育てられたブドウから造られるワインは、クリーンな味わいと豊かな果実味が特徴。
特に人気のアイテムはリリース直後に完売してしまうことも少なくありません。

未来へつなぐ、地域と共生
奥出雲葡萄園が位置する「食の杜」には、ワイナリーのほかにもパン屋や豆腐屋、農園、子供の預かり保育所などが集まり、地域の人々が健康的な農業を営んでいます。
「ここは“人”が良いんです。とても働きやすいんですよ」と営業担当の佐藤さんが話すように、訪れる人々を温かく迎え入れる空気が流れています。
ワインのラベルには、地域との共生を象徴する二羽の鳥が向き合うデザインが描かれています。これは、お客様とワイナリーの関係性を大切にしたいという想いの表れです。
30年以上にわたる試行錯誤の末に生まれた、奥出雲の自然と人々の情熱が詰まったワイン。ぜひ一度、その味わいを体験してみてください。