長野県
丘の上 幸西ワイナリー
長野県塩尻市片丘地区。近年ワイン用ブドウの栽培地として注目されるこの場所で、メーカー勤務を終えたご主人が、奥様と二人、丁寧にブドウを育て丹精込めて醸し、真っ直ぐでキレイなワインを創っていらっしゃいます。
アルプス山脈を眺める塩尻の丘の上、夫婦で丁寧にブドウを育て、暮らす
塩尻駅から車で約10分。畑の中を登っていくと、”丘の上 幸西(こうにし)ワイナリー”があります。塩尻駅から松本駅へと北に走るJR中央本線に並行して、塩尻から松本に延びる車道が山麓線「アルプス展望しののめの道」。その名の通り、畑や田んぼの丘の上を、遠くにアルプス山脈を眺めながら走ることが出来る気持ちの良い道です。幸西ワイナリーはこの山麓線沿いの塩尻駅近くにあります。ワイナリーと畑がある塩尻市片丘地区は、お隣には、元メルシャン醸造長が設立したドメーヌコーセイさんのワイン用ブドウの畑があり、周りにシャトーメルシャンが圃場を設けるなど、近年ワイン用ブドウの産地として注目されている場所です。
メーカーの技術職を経てワインづくりへ
オーナーの幸西義治さんは広島県出身。セイコーエプソン株式会社でテプラや時計などの開発設計に携わったのち、このワイナリーを設立されました。大学時代、ワンダーフォーゲル部に所属され精力的に活動されていた幸西さん。就職活動時期に、大学の教授から「お前は山ばっかり登ってるんだからエプソンでも行ってこい」と言われたのがきっかけで、この塩尻市に縁が出来たそうです。(塩尻にはエプソンの大きな事業所があります。)
学びたいという好奇心から
そんな幸西さんがワインに出会あったのは、企業勤めをしながら塩尻観光ワインガイドになったことがきっかけです。このガイド、ボランティアと言えど、専門知識を1年間学びテストに受からないと認定されない特別なガイド。このガイドに認定され活動をする中で、山登りで元々培っていた気候や地形についての知識に加え、ワインやワイナリーについても知見を蓄えていきました。昔から「お酒は嫌いじゃなかった」という幸西さん。数年間ボランティアとして塩尻市内のワイナリーを回るうちに、次第に塩尻ワインにも興味を持つようになっていったそうです。
せっかくだから、もう少し勉強してみたいと、長野県主催のワイン生産アカデミーと、塩尻市主催の塩尻ワイン大学を受講されます。塩尻ワイン大学は4年間の受講期間があり、ブドウ栽培から醸造、ワイナリー経営に至るまで、専門的なことを深く学べる大学です。お話を伺っていると、幸西さんは勉強を気負わずにできる方なんだろうなと感じます。新しく何かを学ぶことが自然とできる方。そうでなければ、退職目前にしてテストに挑むなんて、中々できることではありません。
塩尻ワイン大学で一緒に学ぶ方の熱量に影響され、そしてガイドをしていた塩尻の観光に一役買いたいという想いから、この眺めの良い片丘地区の丘の上に畑を借りワイナリーを設立する決心をされました。ブドウを植えたのは幸西さんが57歳の時、ワイナリー設立は61歳の時です。子供たちも巣立ち、幸西さんと奥様のお2人で管理される畑は約0.5ha。メルロー、カベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン、シャルドネ、ソーヴィニヨンブランの5品種のブドウを育てていらっしゃいます。
大いなる自然を受け入れて
「ブドウ栽培はじっくり観察することが最も大事」。0.5haという畑の広さは、夫婦二人でしっかり目が行き届く広さです。お二人で、子育てをするように、健全なブドウを育てていらっしゃいます。畑を歩きながらお話を聞いていると、幸西さんのブドウに対峙する姿が、とても落ち着いて、大らかに見えました。若い頃から山に入っていたから、自然が人間の思う通りにはいかない偉大なものであるという考え方が、幸西さんに沁みついているのだなと思います。
幸西ワイナリーさんのワインは、真っ直ぐでキレイ、という印象。幸西さん自身が好きで植えたというシャルドネやソーヴィニヨンブランの白ワインは酸味が爽やかでスイスイ飲める美味しさです。5品種のブドウ、樽の使用有無でバリエーションを持たせたラインナップです。「たまに、“どれがオススメですか?”と聞かれるんですが、人それぞれですからね、その人が美味しいと思えばそれが一番おいしいんです。」と語る幸西さん。
皆さんも是非、塩尻に遊びに行き、「アルプス展望しののめの道」を走って幸西ワイナリーにお立ち寄りください。幸西さんが優しさいっぱいの笑顔で出迎え、周辺の観光情報と共に美味しいワインを提供くださるはずです。