
木の町で生まれた、雪川醸造の挑戦
12月中旬、雪が降りしきる旭川空港から車で約15分。北海道上川郡東川町に佇むワイナリー「雪川醸造」。
昭和初期には農作物の倉庫として使われていたという赤レンガ造りの建物は、どこか異国情緒を感じさせます。かつて貨物を運ぶ鉄道が近くを走っていたこの町は、木工業の町としても知られ、ものづくりの精神が根付いている地域です。
雪川醸造に向かう途中で、車を停めて休憩していたコンビニの前には、イタリアで家具作りを学んだオーナーが創業した有名な家具メーカーArflexの工場が見えました。
IT企業からワイナリーへ、異色の挑戦
「雪川醸造」の存在を知ったのは本当に偶然でした。試飲したワインはとてもクリーンな味わいで、すぐに取引を打診して、お話を伺うために東川町を訪問。
お会いした雪川醸造の代表・山平哲也さんは、もともとIT企業でエンジニアや事業開発職として活躍していたそうです。しかし、北海道の気候に魅せられて移住し、地域おこし協力隊として3年間の準備期間を経てワイン造りを志したそうです。
東川町を選んだ理由は、積算温度・降水量・日照時間などのデータを徹底的に調査し、ぶどう栽培に最適な地であることを確信したため。
関西出身の哲也さんと沖縄出身の未来さん。縁もゆかりもない北海道でワイナリーを始めた夫妻の挑戦には、地域の特性も大きく影響しています。東川町は木工やアートの分野で移住者が多く、総人口の半数以上が過去25年以内に転入してきた人々。
外から来た人々に寛容な文化が根付いていることも、移住の決め手になったそうです。


クリーンな味わいを追求したワイン造り
初めて雪川醸造のワインを飲んだ時、そのクリーンな味わいに驚きました。哲也さんは年間3000種類ものワインを試飲し、「農作物から作られる食品であるワインに、オフフレーバーがないことが望ましい」と確信したそうです。
そうした信念のもと、ブドウの栽培においても無農薬にこだわりすぎるのではなく、持続可能な農業を実現するために畑に適度な管理を施す方針を選択しています。
当店でも取り扱いを開始後、ソーヴィニヨン・ブランの白、ツヴァイゲルトのロゼともに、お客様からの反応は非常に好評です。フレッシュで、ぶどう本来の個性を活かしたワインが、幅広い食事と相性よく楽しめそうとコメントしていただいております。
ビジネス視点を持つワイン造り
ワイナリー経営において、哲也さんは、ぶとうを栽培する気候、風土といった土地の持つポテンシャルだけでなく、コスト・リソース・収益性といったビジネスの観点も重要視している様子でした。
酒販店や飲食店を運営する私たちのビジネスモデルにも興味を示していただき、「日本ワインを飲める店を大阪に作れば大きな商機があるのでは!?」と語る姿には、事業家としての鋭い視点が光ります。
持続的なぶどう栽培、ワイン造りを目指す雪川醸造。山平夫妻の挑戦と共に、われわれも挑戦を続け成長をしていきたいと考えています。