奇抜なのに堅実なワインづくり
山形県赤湯。イエローマジックワイナリーは、ユニークで大胆なラベルが特徴的ですが、そのワイン作りは堅実そのものです。
初めて訪問した際、駅からタクシーで向かったものの、看板も見当たらず、本当にこの場所で合っているのかと不安になりました。
すると、倉庫のような建物から出てきた女性が声をかけてくださり、岩谷夫妻の奥様だと判明。一気に緊張がほぐれ、事務所に案内されました。
その場で岩谷さんから伺ったのは、補酸捕糖や亜硫酸塩無添加という、ブドウの自然な味わいを最大限に活かすスタイルへのこだわりでした。「ブドウが持つ本来の力を引き出したい」というシンプルで力強い信念を感じます。
ワイン作りの哲学とラベルへのこだわり
イエローマジックワイナリーのワイン作りは、岩谷さんの長年の経験に裏打ちされたものです。30年以上の醸造経験を持つ岩谷さんは、ヒトミワイナリーでの経験を経て、2019年に自らのワイナリーを設立。
ワインのクオリティを最優先し、以前使用していたクヴェヴリから樽発酵への切り替えなど、常に進化を続けています。
ご自身の言葉で「ムーブメント」という表現を使うあたり、やはり同じくムーブメントを起こして、日本が世界に誇るテクノユニットとなったYellow Magic Orchestra(YMO)のファンである岩谷さんらしい感じがします。彼の「ムーブメント」という言葉通り、これまでの常識を超える挑戦を続けています。
また、岩谷さんのこだわりはワイン作りだけでなく、ラベルにも反映されています。
ワインに付けられた名称「TEF no night Fever」は、ラベルには、サタデーナイトフィーバーでジョン・トラボルタが踊るようなディスコのイメージが描かれています。
ユニークなラベルは、岩谷夫妻が自ら手掛けたもので、アパレル業界での経験を生かして、飲む人の興味を引き、会話を生むような魅力的なデザインに仕上がっています。
さらに、奥様がゴム印で作った猫のイラストが可愛らしく、訪れるたびに新たな発見があるデザインです。
日本人の感性に寄り添った味わい
「日本人は味蕾と呼ばれる味覚のセンサーが発達しており、繊細な味わいまで感じ取れる。雑味も取り込んで旨味にした、日本人の感性に合うワインを目指している。」と岩谷さんは語ります。
訪問する前に試飲した「TEF no night Fever」は、その言葉通り、爽やかなブドウの旨味とキレの良さが際立った一杯でした。特に印象的だったのは、和食との驚くほどの相性の良さ。
出汁を効かせた料理に寄り添うように、そのワインの酸味と旨味が絶妙に調和くれます。冬の家庭料理の定番、煮物にもピタッと寄り添うはずです。
限られた生産量で大切に育まれる味
イエローマジックワイナリーのワイン作りには、「量ではなく質」に重きを置く岩谷夫妻の確固たるを感じます。「自分たちでつくる範囲の生産に留めることで、ひとつひとつのワインに責任を持ちたい」と語る岩谷さん。その結果生まれるのは、少量ながらも特別感にあふれる一瓶です。
例えば、「TEF no night Fever」のようなワインに出会えた際には、ぜひ日本の食卓でゆっくりと味わってみてください。
丁寧に作られたそのワインは、ただの飲み物ではなく、料理の味わいを引き立てるパートナーとして、特別な時間を演出してくれるでしょう。