暑い日、大阪の山の奥で出会った好青年
2023年7月後半に差し掛かった真夏の暑い日、待ち合わせ場所は、大阪市柏原市の畑の中でした。汗びっしょりになって収穫作業を終えた木谷さんに挨拶。訪問の事前にインスタグラムのメッセージでやり取りをしていた時には、とても丁寧に応対してくれていた印象でしたが、やはり、直接お会いした瞬間、律儀な人柄が溢れ出ている感じでした。
隣の奈良県香芝市に構えるご自身のワイナリーに収穫したブドウをリーファー車で運ぶ道中にお話を伺いました。
異色の経歴をもつ若い醸造家
奈良県出身の木谷一登さん。これまでの経歴を伺えば、京都大学大学院で予防医学の研究をしたのち、卒業後は、地方銀行に就職。就職後に、銀行員として働きながら、「人生に迷い疲れを感じた時期もあった、一生できる仕事をゼロからつくりたい。」という想いを抱き、銀行の取引先であった、大阪府柏原市にあるカタシモワイナリーを見学したことをきっかけに、ワインづくりの道を志すようになりました。
一念発起したのち、大阪府柏原市にあるカタシモワイナリーでのブドウ栽培、ワイン醸造の研修を含む7年間の勉強期間を経て、2018年から自社畑でブドウ栽培を始め、ワインを委託醸造し、2022年にご自身のワイナリーを地元である奈良県に立ち上げました。
奈良でつくる奈良のワイン
ブドウ栽培には、除草剤、化学肥料を使わず、発酵も野生酵母にたより人工酵母を使っておらず、酸化防止剤も最小限の添加に抑えて、ワインをつくるという木谷さん。「自分が生まれ育った奈良の風土を反映した奈良のワインをつくりたい」との想いでワインづくりに取り組んでいます。
「物理、化学、生物の要素がすべて関係して、融合するのが、ブドウ栽培であって、ワインづくり。」と語るのは、元々は、理系で研究者だった木谷さんらしい。そんな木谷さんが自社畑で育てたデラウェアで作ったワインを試飲させていただきましたが、スッキリとしていて、優しい味わいでありながら果実味もしっかりありとても美味しかったです。
34歳の野望は続く
地元の奈良でつくるワインだけでなく、今後、冷涼な気候風土でブドウ栽培に適すると言われている北海道の余市にもブドウ畑を構えてワインづくりに取り組みたいという構想を思っている木谷さん。2023年時点は34歳の平成生まれが、試行錯誤を繰り返しながらも、これから紡ぎだすストーリーが楽しみでなりません。