北海道
相澤ワイナリー
20年以上かけて育てた無農薬の畑から生まれる、
じゅわっと旨みが広がるワイン
畑で聞いた親子の話
「無農薬、無添加で、丁寧なワインを造っているワイナリーがある」そんな話を聞いて、相澤ワイナリーを訪れました。
帯広の市街地から車で30分。街に近い景色を想像していたのですが、目の前には、北海道らしい大きな畑がどこまでも続いています。
迎えてくれたのは、代表の相澤一郎さん。
畑で始まったのは、ブドウの話ではなく、
お父さんの話でした。
父が種をまき、息子が育てる
相澤ワイナリーの始まりは、お父さんの龍也さん。山が好きで、お金があるとすぐ山を買ってしまう人なのだとか。
ブドウを育てたい、ワインを造りたいというのも、龍也さんが山ぶどうが好きだから。自分で山へ入り、自生しているヤマブドウの実を食べておいしかった木に印をつけ、その枝で栽培を始めたそうです。
一郎さんの話を聞いているうちに、会ったことのない龍也さんに会ったような気になってきます。
一郎さん自身は、高校生の頃は虫が嫌いで、ブドウ栽培にも興味がなかったそう。それが今では、畑に立っています。土地を整えたり、キャンプ場のテントや小屋を組み立てたり。龍也さんが始めたことを、少しずつ形にしてきたのだそうです。
龍也さんが種をまき、一郎さんが育てる。
相澤ワイナリーの歴史は、
そんな親子の話でもありました。
20年以上かけて回り始めた畑
農業法人ではなかったため、買えるのは農地ではない土地。でも、それは裏を返せば、今まで農薬が使われていない土地ということ。「それなら無農薬でやってみよう」そうやって、あいざわ農園は始まったそうです。
畑づくりを始めたのは1998年。「最初は、虫や鳥とブドウが共生する環境をつくるのにすごく時間がかかった。23年目くらいから、やっと回り始めた感覚がある」と話してくれました。
畑の作業では、木についたゴマ粒ほどの虫を
歯ブラシで落としていくそうで、聞いているだけで気が遠くなります。
「時間はかかるけど、やってみたらやれるんですよ」と一郎さん。20年以上かけて畑を育ててきたことや、日々の作業の話を聞いた後では、その言葉の聞こえ方も変わってきます。
きれいに造る
現在は自社醸造をしていますが、以前は10Rワイナリーに醸造を委託していました。一郎さんは、そこでブルース・ガットラヴさんから多くを学んだそうです。
いくつか聞いたブルースさんとのエピソードの中で、特に印象に残ったのは、仕込みが終わった後のこと。
どんなに遅くなっても、どれだけ疲れていても、ブルースさんは排水溝を全部ばらして洗い上げてから帰るのだそうです。教わったわけではないけれど、その姿を見て、一郎さんも同じようにしていると言います。
暮らしから名付けたワイン
相澤ワイナリーでは、ヤマブドウの血を引く「山幸」をメインに使っています。
野性味や酸の強さが語られることの多い品種ですが、飲んでみると、そのエレガントさに驚きました。じゅわっと旨みが広がっていく、
やさしい味わいです。
ワインの名前は、一郎さん自身の名前からとった「163」。奥さまの名前からとった「りなっぴ」。お子さんの名前からとった「龍之介」「いちな」。そして、畑のある以平の地からとった「いたいらトノト」。「トノト」はアイヌ語でお酒という意味です。
どれも、意識してそうしたわけではなく、いつもの暮らしの中にある名前を付けてきたのだそうです。
畑での毎日の作業、醸造場での徹底した
衛生管理、そしてワインの名前。
相澤ワイナリーのワインには、
細やかで地道な仕事と日々の積み重ねが、
そのまま詰まっているように思いました。