
綾町の自然と挑む、完全無農薬栽培
宮崎県綾町は、宮崎市から車で40分ぐらい。宮崎県の中心部に位置します。かつて林業の衰退で苦境に立たされ、「夜逃げの町」とまで呼ばれていました。しかし、町を挙げた有機農業への転換によって全国的に知られる町へと成長しました。この地で、自然と共生しながらワイン造りに取り組むのが香月ワインズです。
ワイナリーを営む香月さんの父は、綾町で農業に取り組み、そんなお父様の想いを継ぎ、香月さんは完全無農薬でのブドウ栽培に挑戦。
カビ対策には重曹と酢を混ぜた液体を、害虫対策には「ストチュウ」と呼ばれる酢・焼酎・砂糖を使用。畑には蜜源となるクローバーや益虫を集める蕎麦を植え、生態系を整えながら、「奇跡のリンゴで有名な青森の木村さんでも10年かかったんだから」と時間をかけてでも理想の畑を育てる想いで、丁寧なブドウ栽培を続けています。

低温発酵で育む果実味豊かな味わい
ニュージーランドでワインの醸造経験を積んだ香月さんは、「低温発酵で果実味を生かし、クリーンなワインを造る」ことを大切にしています。特に、亜硫酸無添加でありながら、透明感があり、時間が経っても安定した品質を保つのが特徴。
訪問した当日に試飲をしたワインは、抜栓後1週間経ってもフレッシュな果実味がしっかりと残っていました。さらに、欧州系のブドウ品種に挑戦しつつも、コスト面を考慮し、食用品種のブドウを活用したワイン造りの可能性も追い求めています。

綾町の自然と調和した多様なブドウ栽培
香月ワインズでは、欧州系品種だけでなく、日本の風土に適した食用品種の栽培にも取り組んでいます。関東で生まれ、綾町に普及したブラックオリンピアもその一例ですが、それに限らず、異なる品種を試しながら、綾町の気候と土壌に適したブドウ栽培を続けています。
多様な品種を組み合わせることで、ワインの表現の幅を広げ、綾町の自然の恵みを最大限に生かしたワイン造りを目指しています。
農福連携と若手育成、未来志向
香月ワインズは、ワイン造りを通じた社会貢献にも力を入れています。提携する福祉施設で育てられた日向夏や文旦を使ったスパークリングワインを生産し、農福連携による新たな可能性を広げています。
また「どんどん海外を見てこい」と若手スタッフの成長を後押しし、日本ワインの未来を担う人材育成にも尽力。国内の枠を超え、ワイン造りの可能性を探求する姿勢は、香月ワインズの大きな魅力の一つです。
綾町の自然とともに歩み、地域と社会に貢献しながら、挑戦的なワイン造りを続ける香月ワインズ。その挑戦が楽しみです。
そんな香月さんは、フットワークが軽く、お会いしたすぐ翌月には鎌倉の店舗でのイベントにも来ていただくことになりました。