奈良が育む若き醸造家の挑戦
2022年に奈良県初のワイナリーとして誕生した木谷ワインは、地元奈良の自然と文化に深く根ざしたワインづくりを目指しています。
代表の木谷一登さんは奈良県出身。京都大学で予防医学を研究した後、地方銀行に就職。社会人として働く中で「一生続けられる仕事を自分で作りたい」と考え、ワインの世界に飛び込みました。
大阪府柏原市のカタシモワイナリーで7年間の研修を経て、2018年に自社畑でのブドウ栽培を開始。2022年には念願のワイナリーを地元奈良県香芝市に設立しました。
異色の経歴をもつ若い醸造家
木谷さんのワインづくりは、自然との共生がテーマです。除草剤や化学肥料は使わず、発酵には野生酵母を採用。
酸化防止剤の添加も最小限に抑えています。「自分が育った奈良の風土をそのまま反映したワインをつくりたい」という木谷さんの思いは、自社畑で栽培されるデラウェアを使用したワインに体現されています。
その味わいは、優しく爽やかで、しっかりとした果実味も感じられる絶妙なバランス。
理系出身の木谷さんらしく、ワインづくりを「物理、化学、生物が融合する作業」と捉え、科学的なアプローチを活かしながら感性を大切にしています。
地元から広がる未来への構想
現在34歳(2023年時点)の木谷さんは、奈良の地でのワインづくりに加え、将来的には北海道余市町にもブドウ畑を構える構想を抱いています。冷涼な気候の余市は、ブドウ栽培に最適な環境として注目される地。
奈良と余市、2つの異なる風土で育まれたワインを通じて、新たな価値を創造されるのでしょう。
この構想はまだ始まったばかりですが、木谷さんの挑戦は、地域を越えて日本のワイン文化をさらに豊かにしていく可能性を秘めています。
温かな人柄と挑戦する精神
訪問時に見せてくれた木谷さんの汗にじむTシャツや、塩の跡がついた仕事着には、地道な努力と真摯な姿勢が滲み出ています。
その温かく律儀な人柄は、奈良の自然や文化に寄り添うワインづくりと重なり、多くの人を惹きつけています。
「奈良のワインを世界へ」という大きな夢を抱きながらも、一歩一歩地に足をつけて進む木谷さん。その挑戦から目が離せません。