
無濾過ワインとは?
「無濾過ワイン」とは、製造過程で濾過を行わず、ブドウ本来の風味を楽しむことができるナチュラルなワインのこと。温度や湿度に敏感で長距離輸送にはあまり適さないため、つくり手との距離が近い日本ワインでこそ、その魅力を存分に味わっていただけるワインといえます。
この記事では、無濾過ワインがどのようなワインか、その特徴や作り方、成り立ち、楽しみ方について詳しくご紹介します。さらに、おすすめの日本ワインも取り上げていますので、無濾過ワインについて知った後は、ぜひその奥深い味わいを実際に体験してみてください。
目次
ワインの製法
ワインは、大まかには次のような工程で作られます。ワインの種類によって多少異なりますが、基本的な流れは同じです。
- ブドウの実を破砕・圧縮し、果汁を絞る
- 取り出した果汁をアルコール発酵させる
- 発酵が終わったら、木樽やタンクに移して熟成させる
- 濾過して澱や濁りを取り除き、瓶に詰める。栓をしたら完成
この<4.濾過の工程>を行わないのが、無濾過ワインです。
ワインは瓶に詰めた後も、沈殿物などの成分の影響を受けながら瓶内で熟成が進み、味わいが深まります。したがって、濾過の有無はワインの仕上がりに大きな影響を与えるのです。
濾過の役割
アルコール発酵後のワインには、多糖類やタンパク質などの不溶物や発酵過程で増えた酵母が含まれており、これらが原因でワインは濁ります。
味わいや品質にも影響するため、多くのワイナリーが濾過を行い、ワインをクリアに仕上げます。濾過の方法には、フィルターを使う方法や遠心分離などいくつかの手法がありますが、その方法や程度は、つくり手がおいしさと安定性のバランスを考慮して判断しています。
濾過の目的は、ワインの中に残る不純物や微粒子を取り除くことで「透明度を高め、見た目を美しく仕上げる」「味わいや香りを安定させる」「劣化を防ぎ品質を維持する」ことです。しかしその反面、ワインに含まれる天然成分も一緒に取り除かれることで、ブドウ本来の旨味や風味が薄れることがあります。そのため、ナチュラルでピュアな味わいを求めて「無濾過ワイン」が作られるようになったのです。
● 多糖類
多糖類は、ワインに丸みや柔らかさを与え、口当たりを滑らかにしてくれます。ただし、過剰に残ると濁りの原因になります。濾過によって取り除くことで質感が軽くなり、よりクリアな飲み心地を得られます。
● タンパク質
味への直接的な影響は少ないですが、高温の環境下だとワインが不安定になり、濁りが発生することがあります。
● 澱などの沈殿物
果肉や果皮の欠片や微細な沈殿物は濁りを発生させ、口当たりを粗くすることがあります。少量残すとワインの自然な味わいやテクスチャが強調されます。
● 酵母
発酵後に残った酵母は、ワインに複雑な風味やコクを与えます。ただし、過剰に残ると風味が重くなったり、香りが悪くなるリスクもあります。濾過によって除去することで、すっきりとした味わいになります。
無濾過ワインの特長
無濾過ワインは、ブドウの個性やテロワール(地域特性)を最大限に表現するスタイルとして評価されています。不完全であることをむしろ美徳とし、
「生きたワイン」として豊かな風味や香りが楽しめる点が魅力です。 大量生産されることは少ないため、特別感もあります。ワイン専門家や愛好家の間でも注目されているカテゴリーです。
このスタイルのワインは、ブドウ本来の旨味や風味が残り、複雑で深みのある味わいを楽しめます。また、微細な粒子や沈殿物が含まれることで、独特の厚みや滑らかさのあるテクスチャを感じられます。まろやかでリッチな口当たりは、アルコールの苦手な方やワインを飲み慣れない方にもオススメです。
また、保存料である亜硫酸塩などの添加物を極力避けるという特徴もあります。そのため、より純粋で自然な風味を楽しむことができます。
無濾過ワインの成り立ち
古代~中世にかけてのワインづくりでは、現代のような高度な濾過技術がなかったため、無濾過ワインに近い自然な状態で瓶詰めされていました。沈降による自然な分離だけでは不純物を完全に取り除くことは難しく、沈殿物のあるワインが一般的でした。
18~19世紀の産業革命期に入るとワイン製造の技術は進化し、より効率的で精度の高い濾過技術が導入されました。これにより、クリアかつ保存性の高いワインが作られるようになり、濾過されたワインが主流となっていきました。しかし、一部のワイン生産者は伝統的な製法を守り、濾過を行わないワイン作りが続けられました。
20世紀後半頃から、「ナチュラルワイン」や「無濾過ワイン」の人気が再燃。自然な製法やテロワールを尊重するワインへの関心が高まり、無濾過ワインが再び注目されるようになりました。
現代では、無濾過ワインは単なる製造方法の一形態ではなく、伝統と革新が融合した形として愛好家から支持されています。
テロワールとは?
テロワール(Terroir)は「地域特性」と訳され、「その土地特有の自然環境や条件(土壌・気候・地形・微生物・独自の栽培方法や伝統的な醸造技術などの人の影響)が、ワインや農産物に影響を与える」という概念のフランスの言葉です。同じ品種のブドウであっても育った土地により風味が異なり、その土地独自の個性を持つワインが生まれます。
無濾過=にごりワイン?
一口に無濾過ワインと言ってもその風味やスタイルはさまざま。時間をかけて澱を沈めその上澄みを使った、ほとんど濁りのないクリアなワインもあれば、完全に濁った深い味わいの感じられるワインもあります。
濁りのあるワインは世界中で製造されていますが、海外では「Unfiltered Wine」や「Cloudy Wine」と表記されるのが一般的です。「にごりワイン」は、日本酒の「にごり酒」に影響を受けた日本ワイン特有の表現であると考えられています。
無濾過ワインの扱い方、飲み方
無濾過ワインは通常のワインと比べて温度や湿度の変化に敏感なため、保管には注意が必要です。冷暗所やワインセラーで保管するようにしましょう。
理想的な温度は10〜15℃程度です。
開栓前にも準備が必要です。ワインの底に澱が溜まることがあるため、まずは縦置きでボトルを静置して澱が沈殿するのを待ちます。コルクを抜く際には、沈殿した澱が舞ってしまわないよう、できるだけ動かさずにそっと抜くようにしましょう。また、デキャンタージュという方法を行うと澱がグラスに入るのを防ぐことができます。(詳しくは:澱を取り除く「デキャンタージュ」とは? )
おすすめの日本ワイン
無濾過ワインは、温度や湿度の変動に敏感で長距離輸送には適していません。つくり手との距離が近い日本ワインこそ、このワインの魅力を十分に楽しむことができるカテゴリーと言えます。当店がセレクトしたおすすめ銘柄で、ぜひその風味をお試しください。

野生酵母が生んだ軽やかな泡の微発泡ワイン。辛口でドライな喉ごし
「京都丹波てぐみ35」は丹波の畑で育った35種類ものブドウを使用。酸化防止剤不使用の、ブドウ本来の美味しさをそのまま閉じ込めた微発泡ワインです。野生酵母によるシュワシュワとした優しい泡と、辛口でドライな喉ごしが特徴です。
打倒「とりあえずビール」をコンセプトに開発されたスパークリングワインは、最初の一杯にぴったり。華やかな香りと活気ある泡が気分と食欲を一気に高めてくれます。

キリリとした酸とオレンジの旨味が⾯⽩い味わいの発泡ワイン
「TEF no Night Fever 2024」はピンクデラ(青デラより熟成と色付きが進み、甘味と酸味のバランスが特徴的)を使用した発泡ワインです。キリリとした酸味とオレンジの旨味が絶妙に調和した、魅力的な味わいです。
ブドウの自然な味わいを最大限に引き出すことにこだわり、無濾過スタイルのワインづくりを行っている、イエローマジックワイナリー。補酸補糖(酸味やアルコール度数を調整するために、クエン酸やブドウ糖を添加すること)を行わず、酸化防止剤を使用しないことで、ブドウ本来の風味を保つことに重点を置いています。樽発酵により雑味も旨味の一部として昇華させたこのワインは、日本人の感性に合った味わいを提供し、特に出汁を効かせた和食との相性が抜群です。ユニークなラベルにも注目してみてください!
「日本ワイン店 じゃん」では、全国のつくり手を訪問し厳選した100種類以上の日本ワインを取り扱っています。角打ち営業では、旬の食材と和の調味料を使った料理とのマリアージュもお楽しみ頂けます。日本中を旅するようにこのワインからあのワインへ、人に教えたくなるマリアージュの発見と、共感と感動を分かち合う仲間が出来るはず!ぜひお気軽にお越しください。

